「京の年中行事十二ヶ月」の周辺(1)---鳥居(オレンジ)/RAAK

これは、友人から京都土産としていただいたもの。
永楽屋が2004年に立ちあげた新ブランド、RAAKのてぬぐいです。本家は一枚絵が多いですが、RAAKは小紋が中心。デザインもカラーも現代的で、乙女系(?)。色ちがいがいっぱいあるのも、目移りのもとでございます。
お稲荷さんの鳥居みち、行きつくさきには何がある〜♪---てな感じで、うねうねと幾重にも連なる鳥居のあいだから、お狐様が姿を覗かせています。
京都の名所・伏見稲荷大社の千本鳥居がモチーフ。
異空間につながっていそう・・・。
さて、ついこないだの4月25日に、『てぬぐい手帳―京都・永楽屋、RAAKの心得』という本が出ました。
昭和初期の「百いろ会」時代の手拭をテーマごとに紹介する、『京てぬぐい―永楽屋コレクション (Art)』のダイジェスト的な内容に加えて、RAAKのてぬぐいもカタログ風に掲載。さらに、それらの手ぬぐいを用いての季節ごとのインテリアディスプレイの提案や日常使いの例、歴史、製法などのページもあります。
『京てぬぐい』は絶版みたいですし、『RAAKの京都だより』はポストカードブックで見づらいので、この本一冊で、二度も三度もおいしいぞ♪
個人的には、興味津々の「百(もも)いろ会」について、やっぱり、サラッと触れてあるだけだったのが、軽く残念だったんですよね〜。
十代細辻伊兵衛(伊太郎。明治16(1883)-昭和18(1943))が、昭和5年からの10年間、最先端の染色技術を駆使して毎年100種の手拭を製作したという「百いろ会」。
頌布会みたいなものだったのか。見本帳作成の一環だったのか。一反分は染めたのか。一点ものなのか。一般の販売ルートにはまったく乗せなかったのか。今年も100デザイン染めるぜ!という、純粋な内向けのチャレンジだったのか…等々、疑問が尽きません。
当代さん曰く、「採算度外視の道楽で作っていたもの」(インタビュー)とのことなのですが、その「道楽」が、貴重な企業資源となって老舗復活に寄与したわけですから、十代さんや会の活動について、もうちょっと情報が欲しい・・・(私の目に触れていないだけかも?)。
で、勝手に調べたところを、ちょこっと。
いま、国際日本文化研究センター(日文研)に、「都年中行事画帖」と名づけられている資料があります。
中島荘陽という画家が、京都の一年間をいろどる年中行事や祭礼の数々を描いた画集で、京都出身の風俗史研究の大家・江馬務(明治17(1884)-昭和54(1979))による各行事の内容・由来などの詞書を付して折本とした私製本です。
同氏の跋文を、前後を略して引用(太字は引用者による)。
今平安青年画家中島荘陽(なかじまそうよう)氏、数年の心血を濺いでこを写すこと五十、歳端に始りて年暮に終る。筆を弄する微にして密健にして麗妙趣尽きず。その大丸(だいまる)に展観するや、偶々永楽屋(えいらくや)主人細辻伊兵衛(ほそつじいへえ)氏之を購はれ坐右の珍とせむとし、装少成りて予にその解説執筆をもとめらる。予夙に細辻氏と知遇を蒙り[言+巨]辞すべからず。乃ち禿筆を駛する。三月上巳の佳節に功を竣へ同家に渡す。氏風流書画骨董に甚深の趣味を有せられ、店務にいそしみ給ふ傍、之を鑑賞してその労を医せらる。(略)
昭和三年(しょうわさんねん) 上巳佳節 風俗研究所長 江馬務(えまつとむ) 識印
おお、十代さんが!と注目されるわけですが、ひとまず大略としては---中島絵師が描いた京都の五十種の年中行事絵が、大丸百貨店に展示してあった。十代さんが気に入って購入し、装丁をほどこした。江馬氏は解説を付けてほしいと頼まれ、執筆した。十代さんは書画骨董好きで、店の経営にいそしむ傍ら、これを鑑賞して疲れを癒した。---こんな感じですか。
十代さんの京都愛、美術嗜好がうかがえる資料であるとともに、「百いろ会」昭和10年のシリーズ物「京の年中行事十二ヶ月」(現在、復刻あり)誕生の機縁が、ここにあるっぽい。
当該シリーズの図案を描いたのが、ここに出てくる「青年画家」中島荘陽なのです。
昭和3年に絵を購入してから、ずっと交誼を保っていたんですね。
(現行の「画帖」には、絵が百枚ほどあります。全8巻で第二巻に跋文が付いていることからすると、どんどん描き足してもらっていたのか・・・)
何例か、「都年中行事画帖」の絵と「京の年中行事」手拭のデザインを引き比べておきましょう。
季節柄で、5、6、7月の三ヶ月分。
(画帖の画像は日文研サイトより、手拭の画像は京都デザイン優品サイトより。縮小して引載)
【五月 葵祭】

藤花で飾られた勅使の御所車。
【六月 藤森祭】

駈馬神事 。手拭の背景が爽やか。
【七月 祇園祭】

くじ取らずで巡行の先頭を行く長刀鉾のズームアップ。
(十代さんの私製本が、日文研蔵となった経緯には当然興味ありますが、おいときます。知りようもないですし〜)
- [2008/04/29]
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