日記体のワナ---『半身』サラ・ウォーターズ著(再読)
二度目(一度目のあらすじと感想@倉庫)なので、作者の仕掛けに気をつけながら読んでいきました。
いかにして騙されたのか---という突き放した見方をしますので、マーガレットに対して、かなりイジワル目線になっちゃいました。思いこみが激しくて、けっこう意固地な人ですよね。
構えて読まなければ、無意識の主人公補正で、彼女に共感もするし、言動も無批判に受け入れてしまうんですけど・・・。
思えばこれが、作者の思う壺なわけですね。
この作品は、マーガレットとシライナ、両者の日記で構成されています。
日記というものは、当然のことながら、筆者が書きたいことしか書かれません。毎日の出来事がありのままに記されているわけではないし、情報の恣意的な選択も、解釈もあり。
しかのみならず、筆者が睡眠薬の常用で認識力が曖昧だったり、意図的にごまかしたりしているんです。
読者が与えられる情報は、実はきわめて限定されたもの。
「いったい何が起きたのか」の全体像をおさらいするためには、欠落部分をさまざまに想像しなければならない。作者が口を噤んでいるために、その余地がたっぷりと残されている点が、読んだ後のモヤモヤ、イヤ〜な感じにつながっていますね。
マーガレットとヘレン、又、ブリンク夫人と母親の関係のこと、プライア氏の死の前後、シライナの霊能力の真偽、女中交代の裏事情など、明らかにはされないままの部分の多いこと。
もうマーガレットは、最初から嵌められてますよね。
シライナは、初対面の慰問者が来るたびに、わざと居丈高な、高圧的な態度を取ることで、テストしていたのでしょう。
シライナ達のもくろむような人間関係に乗ってこない人間であれば、怒って反発しそうなところを、マーガレットは、オドオドと下手に出てしまった。それで「いける」と見込まれてしまったのでしょう。
唐突ですが、福岡県で起きた連続殺人事件を思い出しました。平成10年以降、30代の女性看護師4人組が、保険金めあてに自分の夫らを殺していった事件。主犯格の吉田と、本作品の黒幕って、よく似たタイプじゃないでしょうか。
吉田は、(略)堤ら3人に対して女王と奴隷の関係を強要し吉田のことを、「吉田様」と呼ぶように強制していた。実生活では、吉田の世話はもとより、3人の娘達の面倒も3人に負わせていた。更に、吉田と堤は同性愛の関係だったという。堤に毎日のように関係を迫り、拒絶されると過去の男関係などをあげつらって激しく罵倒したという。 (福岡・看護師連続殺人事件(事件史探求)より引用)
こういう性格の女性がいたり、女どうしで支配・従属関係に陥るというのが、忌まわしくも信じがたい・・・。
- [2008/05/16]
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