『グールド魚類画帖 十二の魚をめぐる小説』
「へえー、グールドって、魚も描いてたんだ?」なんて、大いなる勘違いをしていた私…。
「グールドって、紀宮様ゆかりの人だし、ご結婚記念読書だわ〜」なんて、大ボケしていた私…。
恥ずかしい!
ふたりのグールドは、全くの別人でした。
「博物学」「生き物の絵」という共通項にウッカリ…。調べてみたら、ともにイギリス人だし、同世代でもあったのですが…。
紀宮様がご勤務先(山階鳥類研究所)で調査されていたのは、鳥類学者で、手彩色石版画による多数の鳥類図譜を制作したジョン・グールド(John Gould,1804-1881)。ご結婚の少し前に、研究成果となる本を出されたのですよね。このニュースで、「生き物の絵を描いたグールドさん」の名前が、頭にインプットされたのですよ…。

紀宮清子編 『ジョン・グールド 鳥類図譜 総覧』 玉川大学出版部 2005
こんなふうな絵。写実的かつ美麗なボタニカルアート。

参照 玉川大学:ジョン・グールドのページ
本書の主人公(に仮託された)ウィリアム・ビューロウ・グールド(William Buelow Gould,1801-1853)の描いた水彩画。どことなくユーモラスな味わいがあります。

タスマニア州立図書館サイト内のページでたくさん見られます。
- 1827年 ウィリアム、窃盗罪により流刑植民地ファン・ディーメンズ・ランド(現タスマニア)に送致される
- 1838年 ジョン、オーストラリアに採集旅行のさい、タスマニアにも立ち寄る
淡ーい接点がありますね。この頃、ウィリアムは博物学マニアの植民地医師に仕えて魚や植物の絵を描いていたようですが、ふたりは出会うことがあったんでしょうか…。
グールドの魚たちは、妙に人間くさい表情をしています。本書では、その絵は未開の英国植民地タスマニアに蠢く者たちの似姿となり、一章ごとに魚=人物を取り上げつつ、グールドが送り込まれたサラ島での、監禁・拷問・暴力なんでもありの、カオスな世界を描いています。
本国から遠く離れてタガが緩みきった支配層や、虐待される流刑者や、原住アボリジニの姿。これが、実態に近いものなのか、デフォルメされているのか、分かりません。
自分の島に新たなヨーロッパを建築しようと、トンデモなマイドリーム満載の、パノラマ風の建築物でまわりを固めさせていく司令官。
上への報告書や書類で、現実からかけ離れた理想の植民地像を独自に作り上げている書記官(文献史学者に対する脅威!)。
やけくそ気味の開き直りで囚人としての運命を達観し、暴力や理不尽にお付き合いしていることを、「魚の本」に書きとめるグールド。
そして、それら一切を小説にまとめた作者。
それぞれが、それぞれの妄念を投影して、タスマニア植民地を築き上げているのですから…。
最終章は難解。偽アンティーク家具屋と「魚の本」の関係って?
最初の章をもう一度読んでみたいところだけれど、貸出期限が来てしまったので無理。残念。
Gould's Book of Fish by Richard Flanagan
- [2005/12/03]
- 本|海外作家 |
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