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  本の感想文、手ぬぐい紹介にからめた雑談などを

『さらば死都ウィーン』 

さらば死都ウィーン―美術修復師ガブリエル・アロンシリーズ
ダニエル・シルヴァ/作
山本光伸/訳
論創社/2005



『報復という名の芸術』に続く、イスラエル工作機関の暗殺要員にして美術修復師、ガブリエル・アロンものです。

首相選挙が近づき、極右政党候補の優勢が伝えられるウィーン。戦争犯罪調査事務所が爆破され、事務員の女性2名が死亡、所長が重態となる。ヴェネツィアでの絵画修復作業を中断して調査に入ったガブリエルは、この地に住むアウシュビッツ収容所経験者のクライン老人が、行きつけのカフェで、元ナチス親衛隊(SS)将校を目撃したことを事務所に報告しており、これが事件の引き金となったらしいことをつきとめる。その男・ヴォーゲルは、オーストリアの主要産業に影響力を有する大富豪。経歴を洗っても、ナチSSだったという記録は無かった。しかし…。


本書は、次のような事柄を下敷きにしています。
  • 《秘密作戦(アクツィオーン)1005》
    大戦末期、ナチスが収容所でのユダヤ人大量殺害を隠蔽するため、土葬していた死体を改めて掘り出し、焼却。これに従事したユダヤ人奴隷も皆殺しにし、証拠隠滅をはかった。

  • カトリック聖職者によるナチス関係者逃亡幇助
    ドイツ敗戦後、ローマ在住のドイツ・オーストリア出身の聖職者が、ナチス関係者の逃亡を手引きした。教皇&ヴァチカンの組織的関与については不透明。

  • アルゼンチンのペロン大統領による、ナチス逃亡者の大量受入れ
    “エビータ”の旦那さんは、ナチのシンパだった。失脚の際、資料を殆ど処分したため、全貌は闇の中。

  • アメリカCIAによるナチスの東部方面担当情報将校の囲い込み
    ソビエトとの冷戦に直面したアメリカが、元ナチス諜報部の実力者に便宜をはかり、情報網を再構築させた。


西欧の戦後政治における、反ユダヤと反ナチスのせめぎあいが重すぎます…。ナチスは完全否定されるべきもの、しかし、ホロコーストの罪人に法的制裁を求めるイスラエルの主張に政治的圧力を読み取り、内政干渉だと硬化する国々。本音と建前のオソロシさよ。

重いだけに良質なサスペンスの素材を、作者は、うまく料理したと思います。前作より、スラスラと読めました。
でも、微妙〜にこちらの求めるものが得られないんですよね。作者とフィーリングが合わないのかも?
話の展開が単調で、緩急がないのが残念なんです。無駄な遊びの部分がなく、ずーっと緊張感を保っているといえばそうなんですが、ちょっと笑えたり、ほのぼのしたりの場面もまじえれば、盛り上がるシーンも、より際立つと思うのですが…。

それから、主人公のガブさんに可愛げがない。中年ながらルックス良しで、つらい過去があって影があって、前作同様、若い美女にモテモテなんですが、マジメで、つまらんのですよ。絵画愛に溢れていて、絵のことには思わず夢中になってアツく語りまくってしまうとか、そういう愛敬も欲しいところです。


A DEATH IN VIENNA by Daniel Silva

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