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  本の感想文、手ぬぐい紹介にからめた雑談などを

『エルガーノの歌』 

エルガーノの歌

井辻朱美/作
ハヤカワ文庫/1990



井辻さんというとファンタジーの翻訳家・研究者としての活動しか存じあげなかったんですが、実作もされていたんですね。
本書は、表題作以外は、すべて独立した舞台・主人公が登場する短編集です。
ファンタジーというと、カタカナ語が乱舞する装飾過多の作品が多いなか、本書に収められた作品はみな、世界観やキャラに入り込み過ぎず、アッサリ突き放した感じの簡明な語り口なので、落ち着いて読めました。荒唐無稽感も強くないし、どちらかというと寓話ふう。
それゆえ、異世界の不思議な話というより、教訓・人生訓めいたものの主張が強いなと思える作品もありましたが、もともと、物語ってお説教じみたものですからね。(お気に入り=★)

「魔界の花」
姿かたちは恐ろしくても、心はオトメな魔物のお話。

★「北の娘」
故郷に帰還した騎士の喪失感や寂寥といった感情描写がものすごく抑制されていて、いい風合いを出してます。

★「イスファタル」
たぶんイチオシ。魔物に親近感を持ち、人まじわりを倦厭する王子の物語。短いながらドラマ性が豊かだし、王子の心のありようが切ないです。

「谷の女神」
若い冒険者が、女神の祝福を受けてひとまわり大きくなるお話。

「雲」
父を亡くしたサーカスの娘と道化師のお話。

★「海の王子」
漁師を守護する魔界の王子のお話。王子が瀕死の若者に語る言葉が意味深で、これが魔物が魔物たるゆえんなのだな〜と、ヘンに感心してしまいました。

「イシルハーンの賭け」
人間臭い競争心や射幸心を持つ神様と、人間離れした慈愛や前向き思考を持つ娘の幽霊の賭けのお話。

「北方の太陽」
雪深い国のお話。獣のように狂暴で強いヒロイン像がめあたらしい。

「魔物の贈物」
母親の病気を癒す力を求め、少年が旅に出るお話。物語の定石をくつがえす展開に肩透かしされます。

「黄金の髪のロムセイ」
気まぐれによって人間の妻となった神のお話。この神様も人間臭い。

「赤い石」
コンビを組んで冒険する美男と醜男。ある日、醜男が魔物に誘惑されて・・・。これも定石を外してありますね。ニヤリとしてしまいます。

「ファラオの娘」
愛を知らずに死に、長い時を幽霊として過ごしてきた男と狩人のお話。

「エルガーノの歌」
憧れの南の国で影の女神に魅入られ、歌びととなって放浪する元騎士エルガーノを主人公とする連作短編。エルガーノの立ち位置や生き様の描写が、もうひと押し欲しいような、もどかしい感じがします。死神のエピソードが好き。

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