『世界のはての泉』 上下
| 世界のはての泉 (上) ウィリアム・モリス川端 康雄、兼松 誠一 他 (2000/01) 晶文社 この商品の詳細を見る |
| 世界のはての泉 (下) ウィリアム・モリス川端 康雄、兼松 誠一 他 (2000/01) 晶文社 この商品の詳細を見る |
19世紀イギリスを代表する工芸・装飾デザイナーであるウィリアム・モリス。今でも彼の壁紙や織物デザインの人気は高いですよね。筆者も大好きです。当ウィリアム・モリス・コレクションの装丁にも用いられています。
この作品は、モリスが晩年に執筆したファンタジー(散文ロマンス)。
とある小国の末っ子王子・ラルフは、ある日、冒険を求めてお城を飛び出し、愛と美、幸運と長命をもたらすという「世界のはての泉」の噂を聞き、その水を飲みに行こうと意欲を燃やします。
旅の途次では、戦士や山賊、異人種などに襲われ、しばしば捕虜にされたり、殺されかけたりしますが、勇気と気転で上手に切り抜けていきます。
かつて「泉」の水を飲んだ美貌の貴婦人と激しい恋に落ちたり、やはり「泉」へと旅する乙女アーシュラと遭遇し、やがて、お互いかけがえのない存在になっていったりもします。
上巻は、かたい穏やかな語り口のせいもあり、えんえんと旅路が続くだけの、起伏に乏しい印象だったのですが、下巻でアーシュラと二人旅になってからは、泉への道筋もはっきりと示され、風景もめあたらしくなって、どんどんひきこまれて読みふけってしまいました。
「泉」への到達はクライマックスなんでしょうが、ある意味ではターニングポイント。
帰途についたラルフが、往路を逆にたどり、まるで伏線を回収していくかのように、お世話になった人々と再会を喜びあったり、圧政や暴力といった問題を解決していく---という後日談めいた流れになるのですが、これが意外にも、たいへん面白かったです。
天真爛漫でむこうみずなお坊ちゃんだったラルフが、2年間の長旅の経験と、「泉」の水の効果によって、著しい人間的成長をとげており、ほとんど別人のように思慮深くなっているんですよ。アーシュラとも熱々だし、頼もしい限り。
(そういえば、夢に出てきたアーシュラが「ドロシア」と名乗ったことの謎解きはされてたかしら・・・?放置かな・・・?)
さて、下の図版は、モリス自らが設立した印刷工房ケルムスコット・プレスにより、彼好みの装丁を施して、1896年に刷られた本作品の豪華本です。

(ウィスコンシン・ミルウォーキー大学所蔵本)。
美麗〜。
フォントはモリス自作のチョーサー・タイプ。挿絵は、ラファエル前派の画家にして友人のE.バーン-ジョーンズによる木版画で、暴君の罠から逃げ出したラルフが、同じ暴君の城から脱出してきたアーシュラと、夜の森で再会する場面です(邦訳本にも、原書の挿画4枚がみな所収されています)。
*ケルムスコット・プレスの詳細は、福岡大学図書館のサイトをどうぞ♪
モリスのファンタジーは、最高傑作との評価がなされている(トールキンやC.S.ルイスのお墨付きだそう)これ一冊でいいや〜と思っていたのですが、彼が描くテーマに興味が出てきたので、コレクションの他のタイトルも、おいおい読むつもりです。
- [2006/07/23]
- 本|ウィリアム・モリス |
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