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  本の感想文、手ぬぐい紹介にからめた雑談などを

『不思議なみずうみの島々』 上下(その2) 

その1より続く)
不思議なみずうみの島々〈上〉 / ウィリアム モリス
不思議なみずうみの島々〈下〉 / ウィリアム モリス

バーダロンは、次第に黒の従者アーサーに心惹かれていき、アーサーもまた然り。しかしはっきりと言葉には出されぬまま、アーサーは他の二人とともに、三姉妹を救出するため〈無為豊穣の島〉へと向かう。
〈探求の城〉に残ったバーダロンは、心配を紛らわせるために郊外へ探検に出かけ、三騎士と敵対関係にある無頼者〈赤の騎士〉の手下である、〈黒の騎士〉トマスと出会う。トマスはバーダロンをさらい、主君の待つ〈赤の要塞〉へと連行する使命を帯びていたが、バーダロンに恋してしまったことから、主君を裏切り、バーダロンを〈探求の城〉へ無事に送り届けることを決意。しかし、追ってきた〈赤の騎士〉がトマスを殺害し、バーダロンを捕まえて連れ去ろうとする。
あわやというところへ、三姉妹を救出して帰還した三騎士たちが急襲。争いの末、〈赤の騎士〉は斃れるが、金の騎士ボードインも落命してしまう。
ボードインの死とオーリアの悲嘆、アーサーとアトラ、バーダロンの不穏な三角関係に、重苦しい雰囲気に包まれる〈探求の城〉。残った二人の騎士が〈赤の要塞〉掃討に出陣しているあいだ、バーダロンはアトラを思いやり、その恩に報いるために自ら身を引くことを決意し、城から出て行く。
そして、いつしか5年の月日が過ぎ…。

グラ :バーダロンの参入によって、安定していた三組のグループ交際がガラガラと崩壊。しかも、ホラー映画の雑魚キャラ並みの軽挙妄動が原因で、死人まで出ちゃうという修羅場状態ですよ…。

ノラ :恋は理屈じゃないとはいえ、「皆さん、わたしのことを嫌わないで下さいね?わたしが美人で男性が夢中になっちゃうのは、わたしのせいじゃないし…」とばかりに無邪気なバーダロンには、喝ー!と叫びたくなった。

グラ :アトラがかわいそうで、読むのがつらくなったよ。バーダロンにいちばん情け深かったんだよねえ…。

ノラ :イタさを増幅しているのが、バーダロンにマジ惚れしちゃったのが、三組のうちで最も理知的で思慮深いアーサーだったことだね。黒の騎士トマス曰く、「むっつり屋アーサー」ってことだけど、マジメだからこそ、思いつめちゃうとコワイ、と。

グラ :トマスといえば、すごく血のかよったいいキャラだと思ったな。お行儀のいい〈探求の城〉がらみの男どもとは違って、危険な香を漂わせてて。忠義と恋の板ばさみになって、揺れ動いて、さんざん苦悩したすえに、あの最期は哀れだ…。

ノラ :バーダロンが城を出てからは、仲間の死や、心変わりで歪になってしまった皆の関係を、モリスがどう収めてくれるのかなー?という懸念を抱えながら読むことに。

グラ :ヒロインが幸せになることは予想されるんだけど、略奪女に、安易にハッピーになられちゃあ納得いかないもんね。

ノラ :どうなることかと思ったさ…。まあ、バーダロンとアーサー、離ればなれの冷却期間が5年あって、そのあいだ苦痛にさいなまれて過ごすので、まあ許せる範囲かと。アーサーなんて、心痛のあまり、なかば気が触れた野人みたいになり果てちゃうんだからねえ。

グラ :様式美なんだけど、「禊」があるのとないのとでは、印象が違うよね。バーダロンに対するむかつき度も、随分と下がったし。

ノラ :それでも、アトラの始末は、最後の最後まで気にかかった。作者的に、ほんとに悩ましかっただろうと想像するよ。アッサリとアーサーを諦めて他の男とくっついちゃうようじゃ共感できないし、かといって、ウジウジ暗い顔されたまま終わってもツライ。

グラ :そうそうそう。アトラに救いがあってよかったよね〜。モリスさん、ありがとう(涙)。あのフォローがなかったら、とてもとても傑作とは思えなかったよ。

ノラ :恋人同士の感動の再会場面もシッカリ描きこんであったし、回想の処理も要領よし。この作品よりあとに書かれた『サンダリング・フラッド』を読んだとき、この2点が弱いなと思っていたのだけれど、推敲不足という理由だけではなくて、あえて別の趣向にしたのかな。まかり間違うと、二番煎じになったかもしれない。

グラ :この作品は、ケルムスコット・プレスから、モリス死後の1897年に出版された。モリスは校正刷りの途中までしか見られなかったそう。でも、かなり完成度は高いよね。

ノラ :巷間評価が高いのは、『世界のはての泉』なんだよね。いま、モリス作品コンプしてみて言えるのは、『泉』はやっぱり、旅と戦闘描写、恋愛話のバランスが取れていて構成がいいし、主人公のラルフ&ヒロインのアーシュラは、非常に好感を寄せやすい人柄だったな〜と。

グラ :ただ、冒険の結果、彼らは非人間的な崇高さを発揮しはじめてしまうんだよね。作品としての格調高さを評価できる一方で、哲学・思想臭が気になるむきもあろうかと。

ノラ :その点、この『島々』は、暗喩的なものは随所にみられるけれど、エンタメ的な彩りのほうが豊かだからね。ヒロインにはイライラさせられるところもあったけど、面白かった!

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