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  本の感想文、手ぬぐい紹介にからめた雑談などを

アメリカのギルデッド・エイジ 

肖像画がらみのお話を続けるつもりでしたが、ひとまず脱線。

『シャルビューク夫人の肖像』から、1893年のニューヨーク。

…ニューヨークの新興成金の破壊的な力の証がここにある。かつてあがめられていた神も、その遺産も、飛ぶ鳥を落とす勢いの新興成金たちには勝てないということだ。新たに神の座にすわったのは金であり、その神殿に仕えるためとあらばおのれの道徳の指標をまげるのもいとわない、リードのような人間は枚挙にいとまがない。
拝金の思想は、マンハッタン島の隅ずみまでじわじわと行きわたった。上流階級の人間たちからロウアー・イーストサイドの住人たちにまで。そして、そこでは移民の家族たちが、容易なことでは手にすることのできない見果てぬ夢を追い求めているのだ。(p17)

このような、当時の世相を知るのに好適な本がありました。

ニューヨーク黄金時代―ベルエポックのハイ・ソサエティ ニューヨーク黄金時代―ベルエポックのハイ・ソサエティ
海野 弘 (2001/07)
平凡社

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鉄道王ヴァンダービルト、鉄鋼王カーネギー、流通王ウールワースといったアメリカの立志伝中の大富豪たちと、彼らが莫大な財力を投じて建てさせ、今なおニューヨークのランドマークとなっている壮麗な建物群の列伝です。たいへん面白かったですよ。ニューヨーク建物探訪に行きたくなります。

19世紀末、いわゆるベルエポックどまんなかなのですが、この頃(1860〜1890ごろ)のアメリカを表現する特有の呼称があるそうです。
すなわち、「ギルデッド・エイジ(金ピカ時代・金メッキ時代)」。
先んずるジェファーソン大統領の頃の「ゴールデン・エイジ」に対比しての、“まがい物”の時代という意味合いで、南北戦争後の未曾有の経済成長を背景に、新興成金が台頭し、拝金主義が蔓延し、グラント大統領のもとでの賄賂による腐敗政治が横行した時代だそうです。その一方で、アメリカに文化・芸術が根づき、隆盛した時期でもありました。

この「ギルデッド・エイジ」を舞台にした小説はないかなと、アメリカ世紀末の作品を探してみたところ、目にとまったのがイーディス・ウォートン(1862-1937)。
1870年代のニューヨークを舞台にした物語ということで、『シャルビューク…』『ニューヨーク…』が扱う時期より少し早いのですが、読んでみました、『無垢の時代』。

無垢の次代
無垢の時代 / イーディス ウォートン


邦題「エイジ・オブ・イノセンス〜汚れなき情事」という映画にもなってますね(映画の感想も、そのうち…)。

エイジ・オブ・イノセンス エイジ・オブ・イノセンス
原康義、日野・由利加 他 (2005/06/22)
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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***
エレン・オレンスカ伯爵夫人のニューヨーク復帰は、社交界に驚きを以て迎えられた。ポーランド貴族の夫と別居して帰国するにあたり、若い秘書に協力してもらったという、芳しくない噂が流れている。
実家のミンゴット家は、エレンの従妹であるメイ・ウェランドとニューランド・アーチャーの婚約発表を早め、由緒あるウェランド家とアーチャー家、そしてアーチャー家と縁続きで、社交界のトップにいるヴァン・ダー・ライデン家の影響力に頼って、エレンを盛り立てる体勢を取る。
しかし、ヨーロッパの流儀に慣れたエレンの派手で砕けた暮らしぶりや、対人関係のガードの緩さなどが、名家の婦人たちの顰蹙を買ってしまう。
そして、エレンが正式に離婚訴訟を起こしたがったこと、ついで、彼女の崇拝者である銀行家に不祥事があったことから不興は決定的となり、エレンはニューヨークを去った。


大筋はこうですね。
ここに、メイとの婚約期間から始まり、結婚後も延々と続くニューランドの狐疑逡巡とか、ニューランドとエレンの道ならぬ恋などが絡んできます。こっちが主筋?おそらく映画も、恋愛を重点的に描いているのでしょうな。
しかし、筆者には、異分子をやんわり、巧妙に弾き出してしまう閉鎖的な社会のありようが印象的でした。

というか、「あのアメリカに、こういう人々が生息していた時代があったんだなあ…」という感想を持ちましたね。少数の旧家が、互いに姻戚関係を結びながら、生きた化石のようなヴァン・ダー・ライデン夫妻を頂点として、微妙な力関係を保ちつつ、因襲的で、道徳的なしきたりをきまじめに踏襲しながら、ごく限られた生活圏で暮らしている…。


今日は、ここまで。

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