その2:『情念戦争』、付『8(エイト)』
まずは、時代の立役者ナポレオン・ボナパルトの生涯をおさらいするため、伝記的作品を読んでみることに。
そこでセレクトしたのが、鹿島茂『情念戦争』だったのですが、これが大当たり。面白かった!ナポレオン時代にさらなる興味を持つことができました。![]()
フランス人思想家フーリエ曰く、人間が幸福を感じるためには三段階にわたる情念を満たす必要があると。
第一段階は、金銭を媒介とする物質的情念。
第二段階は、協調・友情・恋愛等、集団において働く精神的情念。
これらを充足し得た人間は、さらに高位の段階にある「陰謀情念」「移り気情念」「熱狂情念」を抱くにいたり、これを満たすべき様々な活動が、社会全体に活力と財力をもたらすのだそうな。
本書は、この説に基づき、1789年のフランス大革命から、1815年のワーテルロー会戦の間の時代を、
「陰謀情念」の権化・警察大臣フーシェ
「移り気情念」の権化・外務大臣タレーラン
「熱狂情念」の権化・皇帝ナポレオン
という、すこぶる強烈で特異な個性を持つ三巨頭が、自らの情念に操られるように行動し、ときには協力、ときには反発しあいながら、歴史を揺るがした時代である---という視点からたどる作品です。「かくなれば、かくなるものと知りながら」という態で、情念の虜となって突き進む彼らの生き様と、革命期の時代を彩る多士済々の人間模様がちょっと戯画的に描かれていて、絶叫マシーン並みに毀誉褒貶の激しいかの時代の歴史が、わかりやすく頭に入りました。
勢いで、同じ作者の『怪帝ナポレオン3世 第二帝政全史』も読んでみたのですが、![]()
こちらは、時代のダイナミズムが薄いためか、叔父さんの1世にくらべて立志伝キャラとして小粒なためか、内政面の記述が多いためか、『情念戦争』ほどには楽しめず。後半は流し読みとなってしまいました。
しかしながら、プローン-プローンことプリンス・ナポレオン(3世の従弟)、高級娼婦コーラ・パール、皇后ウージェニーなど、ロバート・ゴダードの『闇に浮かぶ絵』で見覚えのある面々のポートレイトを見ることができました。なにか懐かしさが…。![]()
(本館での感想文はここ)
そういえば、キャサリン・ネヴィルのミステリ『エイト』の革命期パートで、ナポレオンの母レティシアとか、タレーラン、スタール夫人などがちらっと出てきましたっけ…(ちょっと記憶あいまい)。
8(エイト)〈上〉![]()
初読時はあまり感心しなかったのですが、ナポレオン芋づる本として読むとまた違った興味が出てくるかも。本棚を探してみようかな。
…今日のところはここまで。
- [2005/12/17]
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その1:発端は『謎のカスパール・ハウザー』。付『1809』
ナポレオンってどんな生涯を送ったんだっけ?
ナポレオンの影響を受けて、フランスや周辺国はどんなふうに変貌したんだろ?
---この興味関心のもと、ただ今、芋づるを引っぱっているところです。
さあ、何本の芋が掘り出せますか…。
きっかけは、種村季弘 『謎のカスパール・ハウザー』を読んだこと。![]()
19世紀最大のミステリーのひとつと言われる謎の少年カスパー・ハウザー。十数年間にわたり、地下室で孤独に育てられたというその少年は、保護されたとき、言葉も知らず、そして歩くこともできなかった。
X51.ORG 「1828年独、闇の中から現れた少年カスパー・ハウザーの謎」より。
ハウザー事件のあらましは上記ページを参照して頂くとして…。
種村さんの語りに惹き込まれて、上掲本も一気に読みましたし、事件そのものにも「奇妙なことがあるものね〜」とそそられたのですが、なぜだか、本筋よりも引っかかってしまったのが、当時、カスパールの母親ではないかと噂されたという、バーデン大公妃ステファニー・ド・ボーアルネのこと。

Stéphanie de Beauharnais (1789-1860)
たぶん、「ボーアルネ」という名前に聞き覚えがあったから…?「ボーアルネ」といえば、ナポレオン・ボナパルトの妻ジョゼフィーヌの旧姓(最初の夫の姓)。有名な女性ですから、どこかで見聞きしていたのでしょう。
1807年、オーストリア、プロイセン、ロシアに戦勝し、ヨーロッパの覇者となった皇帝ナポレオンは、血族だけでなく、皇后ジョゼフィーヌの前の結婚がらみの姻族をも総動員して、王や王妃・公妃として周辺国に配置し、支配の強化をはかっています。
くだんのステファニーも、そんな一人。彼女はジョゼフィーヌの前夫アレクサンドル・ド・ボーアルネ子爵の兄クロードの娘です。すなわち、ジョゼフィーヌの義理の姪。1806年、ナポレオンの養女となってバーデン大公国に輿入れしたのでした。
ステファニーは、ナポレオンの肝いりで嫁いだんだ。
ナポレオンの没落後は風当たり強かっただろうな。
大公位を継ぐべき息子をふたりも夭折させてしまうし。
それにしても、ハウザー事件の頃のプロイセン・バイエルン・バーデン等の国々って、なんだか抑圧的でどんよりしている。なぜなんだろう?
と、いうわけで(?)---好奇心に脈絡なんてありはしません---、ナポレオン時代を少し味わってみたくなりました。ほとんど知りませんしね。
ナポレオン関係の本、まず手持ちのものから。佐藤亜紀 『1809 ナポレオン暗殺』。
フランス軍にウィーンを攻囲され、領土も賠償金も献上するはめになりそうなジリ貧状態のオーストリアで、フランス軍人とオーストリア貴族の間でひそかに企まれた陰謀の物語です。
以前、読んだ時の感想はこちら。
ウストリツキ公爵のキャラを面白がってたんですね。今回は、それほど魅力的には映らず、淡々と進む作風のために少々だれてしまう部分もありました。ただ、終盤で公爵が言う「自由」の意味が、わかるようでいてわからずモヤモヤします。以前はスルーしてしまったようですな。
…今日はここまで。
- [2005/12/09]
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